<転校が原因の不登校>
転校が原因の不登校A君は父子家庭という環境で育ち、生活習慣について言及する人がいなかったせいかお風呂に入ることをないがしろにしてしまい、周囲から臭いと言われ続け、中学校1年の後半から不登校になっていまいました。
A君は静かな性格で人がよく、弟の面倒見がいい優しい子でした。
中学校の勧めで、中学2年生から適応指導教室に通うことになりました。
でも、漫画、ファミコン、ゲーム、カード、友達とのおしゃべりをしているばかりで学習意欲はまるでありませんでした。
勉強は嫌いだったのでこのままではいけないと、親御さんが心配されていました。
<解決策>
彼に目に見えた変化が現れたのは中学3年生からです。
そのきっかけとなったのは、適応教室の対応というより、新しいお母さんの熱心なサポートです。
中学2年生の後半にお父さんが再婚し、新しいお母さんを迎えました。
このお母さんが熱心な方で、3年生になってからは同じ学年の友達とテニスをしたり、草野球をしたりして表情が活き活きとしてきました。
教室への出席も増え、身なりもきちんとして以前より清潔感を感じるようになりました。
年があけて、お母さんが進路のことで面談にいらっしゃいました。
お母さんと話していて、Aくんは手先が器用なので職業訓練校を進路として考えているということです。
本人に、高校はどうするつもりか聞いたところ、高校より訓練校に進学したい、とお母さんと同じ意見でした。
Aくんが希望の進路を実現できるように慌てて準備を始めました。
適応教室にも、以前数学と英語を教えた経験のある講師が2人いたので、2人に頼んで午前中に交互に学習指導をしてもらうことにしました。
数学は計算の基礎問題だけ、英語はあいさつ、天候、曜日、日付と簡単な会話文のみでした。
100万点で10点か20点は取ってもらいたいと、必死に指導しました。
その他、面接の猛練習もしました。
「もっと顔上げて!」
「ちゃんと相手の目を見て!」
「もごもご言わないではっきり答えて!」
など、厳しく指導をしました。
勉強が嫌いなA君ですが、みるみる成長していきました。
しばらくしてから、お母さんから、おかげで毎日休むこともなく訓練校に通っているというお電話をいただきました。
今頃は、電気技術関係の会社で活躍しているだろうと思います。
<このケースから学ぶ不登校対策>
「子どもの心に寄り添って・・」「子どもの気持ちを組んで」などいうのを聞きますが、ケースバイケースです。
Aくんのように勉強が大きらいな子は、寄り添っているだけでは成長しません。
時にはぐいぐいひっぱることも大切です。
Aくんの場合は、お母さんがせっかく生活習慣を身に付けようとしてくださったので、「Aくんは勉強が嫌いなので、もう少し自分のペースで過ごさせてあげよう」など言っていては何も進みません。
学校や、学級や、適応教室。学習に責任を持つのは当然のことです。
Aくんは具体的な目標ができたのだからその目標を叶えてあげるために努力するのが私たちの仕事だと思います。
それにしてもAくんのお母さんの、彼を後押しする姿勢には感謝しています。