不登校とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因や背景により、登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあるため、年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的理由による者を除いたもの」と文部科学省はこのように定義しています。
不登校児堂生徒の総数は1975年を境に増加の一途をたどり、2001年にピークをむかえてから現在に至るまで事実上の横ばい状態が続いています。不登校児童生徒の占める割合は、中学生が最も多く、その次に高校生、そして小学生の順になっています。
しかし、今では一番少ないはずの不登校小学生ですらその数が2万人を超えるようになり、いっこうに減少する気配は見られません。以前はいじめが原因で不登校になるケースが一番多かったのですが、最近では原因も多様化し、無気力や心身的症状などの精神疾患などが原因であることもめずらしくなくなりました。
さて、まず学校に行けなくなった原因についてですが、分からないことの方が多いとお考えください。いじめや体罰、事故などの大きな精神的ダメージがかかわっていることもありますが、多くはさまざまな要因が重なっていて、本人にも「たくさんありすぎてわからない」という状況です。
お子様の場合、成績優秀で頑張り屋だったということですから、何らかの要因で学校に行きたくなくなっても、持ち前のバイタリティで、「学校が嫌だ」などとおくびにも出さず、毎日頑張って学校に通い続けるうち、限界を超えてしまったのでしょう。それが、腹痛という身体症状として出たのだと思います。
私たちの会のメンバーをはじめ、多くの経験からいえることは、両親の就労状態、祖父母との同居の有無、きょうだいの数、養育態度、教育方針など、学校に行かなくなる子どもの家庭環境は実にさまざまで、不登校の子どもの家庭に共通する問題というのはありません。
もちろん、完璧な子育て、完璧な親というのがあるわけではないので、いろいろと問題をあげればいくらでも出てくるでしょうが、それは学校に行っている子どもの家庭にも変わらないくらいあるもので、家庭が抱える問題と不登校は、ただちに結びつくものではありません。
ご相談内容を読む限り、無理に連れて行くことを早めに中止されたり、仕事を辞めてお子様と二人で家にいたら学校に行きなさいと言ってしまう気がするというようにお感じになることは、お子様の心に寄り添うことができているように思えますので、その感覚を大切にして、お子様第一に考えてください。
近年、小中学生の不登校や青少年の引きこもりなどの克服や治療は心理カウンセリングなどの精神分野の援助法の発達により大きな進歩を見せています。
しかし、それらはあくまで各領域の専門性によるアプローチを中心としているため個々のケースすべてにその解決法が当てはまるとは限らず、社会全体で捉えれば根本解決には至っていないのが現状です。
そのような現状を踏まえて、時代は治療から予防に変わりつつあります。治療的なカウンセリングの発展が望まれる以上に、不登校などにならないよう予防するために親としてどのような対応が望まれるのか、または引きこもりの状態を克服するために親としてどのような援助が適切なのかを考えることが重要視されています。
さまざまな不登校の事例を見てみると、不登校や引きこもりは「いじめ」などの外的要因や、生まれ持っての性格的特質のみに必ずしも起因する問題ではないということです。
上記のような原因のみに起因する事例は確かに存在しますが、それだけが原因ではなく様々な要素が複合的に絡み合った「複合型」の事例が近年は見受けられます。
家庭教育推進協会では上記のような「複合型」の不登校や、近年取り上げられている「悩まない不登校」、登校したり休んだりを繰り返す「五月雨登校」の予防のために家族療法という手法を推奨しています。
家族療法とは親が子どもの性格傾向や年齢などを専門のカウンセラーからのアドバイスを受けながら、具体的にどのような言葉がけをすればいいのかを考えながら対応していく手法です。家族療法は不登校の復学支援機関などでも取り入れられている手法です。不登校や引きこもりの予防的な家庭教育を学ぶことで、親子の信頼関係の構築、子どもの自立心や協調性、社会性などを家庭内で開発・育成する効果が期待されます。
家庭教育推進協会では、治療的なカウンセリングだけではなく、このような予防的なカウンセリングの分野の必要性を感じており、各専門機関との連携を深めていきながら、その情報を社会にフィードバックしていくことを目指しています。また親対象の家族療法を中心とした予防的な家庭教育のセミナーやワークショップも行っています。